イヤホンの仕様表にある「SBC」「AAC」「LDAC」「LC3」。これらは、Bluetoothで音を送るときの「コーデック」と呼ばれる方式の名前です。聞き慣れない言葉ですが、イヤホン選びで見落とすと、「買ったのに、思っていた音で聴けない」ということが起こります。
結論から言うと、コーデックは「送る側(スマホなど)」と「受ける側(イヤホン)」の両方が対応して、はじめて使えます。この記事では、主なコーデックの違い、購入前に確認したい注意点、選び方の手順を、メーカーなどの公式情報をもとに整理しました。
イヤホン選び全体の考え方は、イヤホン・ヘッドホンの選び方ガイドで解説しています。この記事は、その中の「コーデック」に絞った内容です。
Bluetoothコーデックとは?
コーデックとは、音声のデータを圧縮して送り、受け取った側で元に戻すための方式のことです。サンワサプライの解説でも、「音声データをワイヤレスで伝送する際に、データを圧縮・変換して機器間でやり取りするための方式」と説明されています。
ワイヤレスでは、一度に送れるデータの量に限りがあります。そのため、音声を圧縮して送ります。どう圧縮するかが、コーデックによって違います。
送る側と受ける側、両方の対応が必要
ソニーの公式ページには、LDACについて「LDAC対応機器同士であれば、ハイレゾ音源を高音質でワイヤレス再生できる」と書かれています。イヤホンがLDACに対応していても、スマホが対応していなければ、LDACでは聴けません。コーデックの確認は、イヤホンだけでなく、手持ちのスマホも見る必要があります。
主なコーデックの違い
ここでは、イヤホンの仕様表でよく見かける4つを取り上げます。公式ページなどで確認できた内容にもとづきます。
| コーデック | 公式情報で確認できた特徴 |
|---|---|
| SBC | ソニーのLDACのページで、比較の基準とされている方式。「328kbps、44.1kHz」という値が記載されています。 |
| AAC | この記事で紹介した製品のうち、複数の公式ページの仕様表に記載があります。 |
| LDAC | ソニーが開発。最大伝送速度は990kbpsで、SBCと比べて最大約3倍の情報量を伝送すると説明されています。「Hi-Res Audio Wireless」の認証を受けています。 |
| LC3 | Bluetooth SIGが、LE Audioで使われ、SBCを置き換えるコーデックと説明しています。 |
SBC:基本となる方式
SBCは、ソニーのLDACのページで、比較の基準として挙げられている方式です。この記事で紹介する製品でも、ソニーのWF-1000XM6、WH-1000XM6、WF-C710N、LinkBuds Clip、ShokzのOpenDots ONEの公式仕様表に、SBCの記載があります。
AAC:仕様表に載っていることが多い方式
AACは、ソニーのWF-C710N、LinkBuds Clip、ShokzのOpenDots ONEなど、公式ページの仕様表で対応が確認できました。ただし、AACで接続できるかどうかは、スマホ側の対応にも左右されます。手持ちの端末の公式情報で確認してください。
LDAC:データ量を大きく送れる方式
ソニーの公式ページによると、LDACの最大伝送レートは990kbpsです。「ベストエフォート」モードでは、通信環境に応じて、330kbps、660kbps、990kbpsの3段階で自動的に切り替わると説明されています。つまり、常に990kbpsで送られるわけではなく、環境によって変わります。
ハイレゾの対象は、ソニーのページの注記では「最高96kHz/24bit」です。
LC3:新しい規格、LE Audioで使われる方式
Bluetooth SIGの技術解説では、LC3は「同じビットレートで、SBCより高い品質」を実現するとされています。また、SBCが345kbpsのとき、LC3は半分以下の160kbpsで、より高い評価スコアを得たという内容のグラフも示されています。LE Audioは、2020年初頭に発表された、次世代のBluetoothオーディオ規格です。
ソニーのWF-1000XM6やWH-1000XM6は、公式ページの仕様表にLC3が記載されています。LE Audioに対応するとも書かれています。ただし、LC3で接続するには、スマホなど、送る側の対応も必要です。
aptXなど、そのほかのコーデック
ほかにも、Qualcomm社のaptXなどのコーデックがあります。この記事では、公式情報を十分に確認できなかったため、詳しい解説は省いています。製品の仕様表に載っている場合は、メーカーの説明を確認してください。
場面別:コーデックをどれくらい気にするか
ここは、公式情報から私が整理した考え方です。人によって感じ方は違うため、参考程度にご覧ください。
通勤・通学で、音楽を聴く
電車の中など騒がしい場所では、ノイズキャンセリングの効きや装着感のほうが、満足度に影響しやすいと私は考えています。コーデックは、スマホと合うかを確認できれば十分なことが多いと思います。
自宅で、じっくり音楽を聴く
静かな環境で、ハイレゾ音源も聴くなら、LDACなどの対応を確認する価値があります。その場合、スマホ側の対応と、音源の種類も合わせて確認してください。
仕事・Web会議
通話の聞こえ方は、音楽用のコーデックとは別の仕組みで決まります。コーデックの数字より、マイクの性能と、接続の安定性を見るほうが役に立つと考えています。
運動・屋外
動いても外れないフィット感や、防水・防塵の注意書きが、まず重要です。コーデックは、その次の確認項目として考えるのがよいと思います。
購入前に知っておきたい5つの注意点
1. スマホによっては使えない方式がある
Soundcore Liberty 5の公式ページには、LDACはiOS端末では非対応と書かれています。同じように、機種によって使えないコーデックがあります。イヤホンの仕様表だけでなく、手持ちのスマホの対応状況も確認してください。
2. 音質は「数字」だけでは決まらない
ビットレートが大きいほど、送れる情報量は多くなります。ただし、聞こえ方は、イヤホン本体の性能や、聴く音楽、使う場所でも変わります。私は、コーデックの数字は、選ぶときの判断材料のひとつとして考えるのがよいと思います。
3. 再生時間にも条件がある
連続再生時間は、コーデックや音量で変わります。たとえばShokzのOpenDots ONEの公式ページでは、再生時間は「SBC・音量50%・初期設定」などの条件で測定されたと記載されています。数字だけで単純に比べないことが大切です。
4. 通話の音は、別の仕組みになることがある
ヘッドセットメーカーのSteelSeriesの解説によると、Bluetoothは通話用のプロファイルに切り替わると、音声の周波数帯域が制限されると説明されています。音楽用のコーデックが優れていても、通話の聞こえ方は別です。Web会議での使い方は、Web会議・テレワーク向けイヤホンとヘッドセットの選び方で整理しています。
5. 遅延は、公式情報に記載がない場合が多い
動画やゲームで気になる「遅延」は、この記事で確認した公式ページでは、具体的な数値の記載がありませんでした。気になる場合は、購入前に、メーカーのサポートに問い合わせるか、返品条件を確認するのが安全です。
主な製品の対応コーデック(公式情報)
公式ページの仕様表で確認できた対応コーデックです。記載がないものは、「公式ページに記載なし」としています。
| モデル | 対応コーデック |
|---|---|
| ソニー WF-1000XM6 | SBC、AAC、LDAC、LC3 |
| ソニー WH-1000XM6 | SBC、AAC、LDAC、LC3 |
| ソニー WF-C710N | SBC、AAC |
| ソニー LinkBuds Clip | SBC、AAC |
| Shokz OpenDots ONE | SBC、AAC |
| JBL Soundgear Clips | 公式ページに記載なし |
| Soundcore Liberty 5 | LDACに対応(iOS端末では非対応と記載) |
公式情報:ソニー WF-1000XM6 / ソニー WH-1000XM6 / ソニー WF-C710N / ソニー LinkBuds Clip / Shokz OpenDots ONE / JBL Soundgear Clips / Soundcore Liberty 5
この表のモデルの種類や、場面別の考え方は、完全ワイヤレスイヤホンの選び方で整理しています。
コーデックを踏まえた、選び方の手順
手順1:手持ちのスマホの対応を調べる
まず、スマホの公式ページや設定で、対応コーデックを確認します。ここで使えない方式は、イヤホンが対応していても、使えません。
手順2:使う場面を決める
通勤、仕事、運動など、使う場面を決めます。コーデック以上に、ノイズキャンセリングや装着感が重要な場面もあります。
手順3:イヤホンの仕様表で、対応コーデックを確認する
手順1の結果と、イヤホンの仕様表を見比べます。「対応」と書かれていても、条件がある場合があります。注記まで読んでください。
手順4:音質は、可能なら試して決める
音の聞こえ方は、人によって違います。店頭で試せる場合は、普段聴く曲で確認してください。返品・交換の条件も確認しておくと安心です。
購入前のチェックリスト
- スマホは、どのコーデックに対応しているか。
- イヤホンの仕様表に、使いたいコーデックが載っているか。
- iOS端末など、使えない組み合わせの注記はないか。
- 再生時間の数字は、どの条件で測定されたものか。
- 通話にも使うなら、マイクの性能も確認したか。
- 返品・交換の条件はどうか。
よくある質問
LDACとは何ですか?
ソニーが開発したコーデックです。最大伝送レートは990kbpsで、SBCと比べて最大約3倍の情報量を伝送すると、ソニーの公式ページに説明されています。ただし、送る側と受ける側の両方が対応している必要があります。
SBCとAACは、どちらが良いのですか?
この記事で確認した公式情報には、両者の優劣を比べた記載はありませんでした。聞こえ方は、イヤホンや端末、音楽でも変わります。手持ちの機器で使える方式を、確認して選んでください。
LC3、LE Audioとは何ですか?
Bluetooth SIGによると、LE Audioは2020年初頭に発表された、次世代のBluetoothオーディオ規格です。LC3は、そこで使われ、SBCを置き換えるコーデックです。対応機器同士で使います。
コーデックは、通話の音質にも影響しますか?
SteelSeriesの解説では、Bluetoothは通話用のプロファイルに切り替わると、音声の周波数帯域が制限されると説明されています。通話の聞こえ方は、音楽の再生とは別に、考える必要があります。
コーデックは、あとから変更できますか?
この記事で確認した公式情報には、記載がありませんでした。機種や端末によって、設定画面で選べる場合もあります。取扱説明書や、メーカーのサポートページで確認してください。
まとめ
Bluetoothコーデックは、音をワイヤレスで送るときの方式で、送る側と受ける側の両方の対応が必要です。LDACやLC3のように、新しい方式もありますが、手持ちのスマホで使えなければ意味がありません。
私は、イヤホンを選ぶとき、まず「スマホで何が使えるか」を確認し、そのうえで場面と装着感を考える順番が、後悔の少ない選び方だと考えています。
参考にした情報
- LDAC(ソニー)
- LDAC 製品ページ(ソニー)
- LC3の技術解説(Bluetooth SIG)
- Bluetoothコーデックの違いと選び方(サンワサプライ)
- BluetoothとUSBワイヤレスの違い(SteelSeries)
※価格・仕様は2026年10月12日時点で、上記および各製品の公式サイトを確認した情報です。仕様は変更される場合があります。購入前に、必ず公式サイトで最新の情報をご確認ください。


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